LA通信 >2002.09.11
 



あれから一年・・・9/11:ナイン・イレブン
NYのワールドトレードセンター(WTC)が崩壊してから早いものでまる一年が経ちました。しかし逆に10年以上も前の遠い過去のような気もします。

9月10日の晩から各TV局では特集を組んで、過去一年間の経過や、犠牲者の遺族のストーリー、アフガニスタンの現状などを放映していました。
そして9月11日も、早朝から深夜まで1日中ずっと、NYやペンタゴンなどで行われたセレモニーの中継等を中心に放送していました。
TVで海からのニューヨークの景色が映し出されました時、WTCが無いそれは、正直それがニューヨークであることが見ただけでは分かりませんでした。
そしてWTCがNYのシンボルであったことを改めて感じました。

ブッシュ大統領は9月11日にテロが再度起こる可能性が非常に高いと警告を発しました。 空港を始め、各地では通常にも増して、非常に厳しいセキュリティーがひかれたようです。

私の家の近所でも確かに通りを走るパトカーの数も増え、ヘリコプターが頻繁に飛んでいたように感じました。
事実過去一年間、空港でのセキュリティーチェックは大幅に強化され、私の友人(韓国系アメリカ人)の友人は、過去2ヶ月間に2回ほど飛行機を利用して旅行をしましたが、2回ともセキュリティーで靴を脱がされチェックされたそうです。
おかげさまで当日は何事も無く済んだようですが、改めて一年前の大惨事をTVで見た時のショック、全ての飛行機がストップした事、そしてテロの可能性が今だにあることを思い出しました。

テロ以降NYでは、大都市であるがゆえに不足しがちな、市民の一体感や連帯感が向上したそうです。また実際にテロが起こり、多くの方が亡くなられた現場であることから、人々の助け合う意識は非常に高いと伝えられていました。

ここLAでも各地で犠牲者追悼セレモニーが行われ、多くの人たちが参加したようですが、昨年のテロの後に見られたような盛り上がりは、残念ながら今回は見られず、非常に静かな一日であったように感じました。
本当にたくさんの自動車や家々で星条旗を掲げていた昨年の光景を、また見られるのではないかと私は少々期待していたのですが、正直、逆に星条旗を掲げている車を見つけるのが難しい程で、あの愛国心を高揚していた事がまるでうそのようでした。
一年前のことであの衝撃的な印象が薄れてしまったのか、NYから遠く離れているからなのか、または現実の生活に追われていて、過去のことに構っていられないのかも知れません。それとも悲惨なことを思い出したくないがゆえ、静かにしているのかも知れません。または遠く離れたアフガニスタンで行われている実感の無い戦争や、パレスチナとイスラエルの激化する紛争、イラクへの攻撃の可能性、更に経済の悪化等による、先行きの見えない事に対する不安感が人々を静かにさせているのかも知れません。

ABCテレビで子供達による質問会が放映されました。
昨年のテロ後にも同様の企画が行われましたが、その時と基本的に同じメンバーで、6歳ぐらいから高校生までの50人ぐらいの子供達が、NY消防署のチーフ、軍隊、FBIのスポークスマン、TVリポーター等に疑問や質問、そして彼らの意見をぶつけていました。
昨年のテロ後、飛行機に乗るのが怖くなった(大人も同様ですが…)、今までよりも家の手伝いやボランティア等、自分の出来る事で他人に役立つ事をやるようになった、両親とよく話すようになった等、この大惨事が子供達に与えた影響について最初、意見が上がりました。また子供達は招かれた消防署チーフのWTC崩壊時の体験談によく耳を傾けていました。

またテロが起こった理由については、「自分たちに責任がある」、「平和が大切」、「どうして話し合う事が出来ないのか」、「また貧しい国の子供達に教育を与える事により、将来のテロの発生を防ぐことが出来るのでは」など、昨年聞かれた"テロリストに報復をする"という考え方よりも、"何とか平和に解決が出来ないか"という意見がかなり増えたように感じました。

また"オサマ・ビンラディンが死ぬ事についてどう思うか?"という司会者の質問に対し、「彼が死んでも、他にもたくさんの彼の仲間がいるから影響は小さい」、「彼が死ぬ事により必要な情報が得られなくなるというマイナスの方が大きい」、「殺す事よりも捕まえて罰を与えるべき」など、単純に"彼が首謀者だからやっつける"的な意見は聞かれませんでした。
私はこの一年間で確かに子供達は何かを学び、成長していると感じました。そして彼らの意見はストレートで、シンプルでとても聞いていて気持ち良く思いました。

では子供達の質問に答えていたFBIや軍隊のスポークスマンの回答はどうだったでしょうか。
子供達の「敵は誰、誰と戦争しているの?」、「もし事前にテロの情報を知っていたら、それを防ぐ事は出来たの?」等というするどい質問に対して、大人である彼らは、多くの言葉を並べているけれど、実際何を言いたいのか、聞いていてもよく分からないような、はっきりしない内容で、ちゃんと答えていないように感じました。
それは何とかアフガニスタンやイラクへの軍事攻撃を正当化しよう、またテロへの対応の失敗を認めないようにしようとする意識が彼らにあったからだと思います。
実際、昨年の同時多発テロの数日前には、CIAはテロの確かな情報を持っていたけれど、本気で対処しなかったという報道が、数ヶ月前にされていました。

現在アメリカが盛んにイラクへの攻撃を示唆しています。
理由はフセインが核爆弾や化学兵器といった大量殺戮兵器を作っているからだそうです。それに対して、国際連邦やヨーロッパの国々は"ノー"と言っています。昨年のテロ事件については同情はするけれど、戦争には協力はしないというのが、彼らの意見だそうです。

イギリスで行われた"誰が世界一危険な人物か?"というアンケートでは、ブッシュ大統領が50%以上で、イラクのフセイン大統領を抑えて一番危険な人物に選ばれたという報道がされていました。
中東でアンチアメリカ運動が激化している事を考えると、今イラクに攻撃を加えたら火に油を注ぐ事になり、状況は泥沼化し、テロ活動が過激化することは予想できます。
もしそうなったら誰が一番被害を受けるのでしょうか…一般市民なのです。それなのに唯一の超大国であるアメリカの大統領は、ひたすら戦争に向けての準備をしているように見えるのは私だけでしょうか?

アメリカで生まれ育った人の多くは他の国の事をよく知らないと言われます。
TVでは世界のニュースよりもローカル(地方)ニュースがほとんどです。
またどこの国へ行っても基本的に英語を使えるので、特に外国語を習う必要が有りません。日本人はよく平和ボケしていると言われますが、犯罪はあっても本土が戦争に巻き込まれた事が無く、豊富な物資に恵まれたアメリカの人たちも、ある種平和ボケをしていると思います。
しかし遠くの国でのことでなく、アメリカ本土が始めて攻撃を受けたこのテロ事件をきっかけに、多くのアメリカ人が爆撃されることの悲惨さ、怖さを知り、そしてもっと他の国に対し興味を持ち、その人たちの立場になって考えられるようになることを期待します。
そのためにもこの9/11(ナイン・イレブン)は、アメリカの人たちにとって忘れてはいけない、とっても重要な日ではないでしょうか。

前述の子供達の質問会の中で、ボスニアから2年前にアメリカに移って来たという少女は、町が実際に爆撃を受けて、とても恐ろしい思いをしたと語り、他国に爆撃することは同じような体験をする多くの市民を生み出すと語っていました。
私も父母から戦時中、爆撃にあって防空壕に逃げ込んだ話を聞いた事があります。日本人である私達も過去に多くの人が同じような経験をしているのです。ですから日本においても、単にアメリカの戦争の後押しをするような事はせず、より力強い発言力を持って、真に世界中の人々のために貢献出来るような国になって欲しいと思います。

私自身もせっかく世界中の人たちが集まっているアメリカという国に住んでいるので、今後もより多くの人たちと親交を深め、より幅広い視野を養って行けたらと思っています。